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放射線部

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当院放射線部では、開院当初より正確な肺がんの診断をするために肺がんの原発部位や転移病巣の発見に有用なPET装置2台及び初期の小さな肺癌を描出可能な16列マルチスライスCT装置を設置しておりました。そして、2012年度にはPET装置よりも診断性能の高いPET/CT装置を導入し、2013年度には80列マルチスライスCT装置、2017年度には64列デュアルエナジーCT装置を導入することで、より高精細なCT画像の撮影と肺がん手術の支援に有用な肺動静脈分離3D画像の作成を行えるようになりました。

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新しい技術の導入によって実現したデュアルエナジーCTは、造影剤の量が半分でも通常撮影に近いデータの収集ができます。これにより、造影剤による腎臓への負担が軽減でき、腎機能が低い患者様に対して造影検査が必要な場合でも対応が可能となりました。そして、撮影の方法によっては予期せぬ血栓を発見することもできます。

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また、MRI装置も2018年度に更新し、画質の向上、撮影時間の短縮、患者様の撮影中の体動によるアーチファクトの低減が可能になりました。

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その他、一般撮影装置2台、CR(デジタル画像処理装置)マンモグラフィ、デジタル透視装置(胃バリウム検査や気管支鏡による肺生検検査に使用)を設置しています。撮影した画像は画像ビューワーシステムで運用し、院内の各部屋で高解像度モニターを使用して読影することが可能です。撮影した画像データを元に、必要に応じて3D画像等に加工できるワークステーションも積極的に活用し、診断・治療に役立つ情報を日々提供しております。

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PET検査とは?

PET (Positron Emission Tomography=陽電子放射断層撮影)とは、特殊な放射性物質で標識した薬を人体に投与して、その物質の体内での動きを見ることで、体組織の機能を見る検査です。 


当院で行っているFDG-PET検査は、がん細胞が正常な細胞よりも多くのブドウ糖を取り込む性質を利用して、体内のがん組織を探す検査です。ブドウ糖にそっくりなFDGという物質を注射で投与し、FDGが体の組織に行き渡るまで1時間弱ほど待ってから、20~30分ほどかけて全身の撮影を行います(当院ではもう一度待って2回目の撮影をすることも多いです)。 


出来上がった画像からは、どこにFDGが多く集まったかが分かります。人体の細胞はFDGをブドウ糖と勘違いして取り込むので、ブドウ糖を多く取り込むがん組織にはFDGも多く集まり、この画像からがん組織がどこにあるのか調べることができます。


CTやエコー検査といった多くの画像診断は、体内の形を見ることで診断しますが、FDG-PET検査は「体内でのブドウ糖代謝」という機能を見ることで診断するため、CTなどとは得られる情報の種類が全く異なり、CTでは探すのが難しい病気を容易に見つける場合がよくあります。また、ほぼ全身を一度に検査することができ、居場所の分からない がん組織を探すのが得意という強みもあり、特にがん診療では転移検索や再発診断といった部分で絶大な威力を発揮します。


ただ、PET検査は機能を見る検査であり、形の情報はほぼないため、逆にCTなら容易に分かるようなことがPETでは分からないこともよくあります。そのため、必要な症例ではPET/CT検査というPETとCTを並行して撮る検査を行い、さらに診断精度を高めています(PET/CTは放射線被曝量が少し増えるため、診断精度を上げるよりも放射線被曝を抑える方がメリットが大きい場合は、PET専用機でPETのみ撮影します)。 

保険適用について 

当院で行っているPET検査・PET/CT検査は、以下の場合に保険適用となります。 

  • 早期胃がん以外の全ての悪性腫瘍(他の検査などで病期診断・転移・再発の診断が確定できない場合) 

  • 心臓サルコイドーシスの診断(サルコイドーシスと診断されており、かつ心臓病変を疑う心電図または心エコー所見を認める場合) 

  • 高安動脈炎または巨細胞動脈炎(前述の大型血管炎と診断されており、他の検査で病変の局在または活動性の判断がつかない場合) 

※虚血性心疾患の心臓PETやてんかんの脳PETは全く違う検査となるため、当院では対応していません。 

PET検査の安全について

FDG-PET検査では放射性医薬品のFDG(18F-FDG)を使用するため、FDGから出る放射線からの放射線被曝があります。またPET/CT検査の場合、並行して撮影するCTによる放射線被曝もあります。PET/CTのCTは通常のCTよりも低線量で検査を行うため、放射線被曝の多いPET/CT検査でも被曝線量は8~10mSv程度であり、この被曝による身体への悪影響はないと考えて問題ありません。

 
また、検査に使用するFDGは非常に単純な構造の単糖類であり、これによるアレルギーや副作用も報告例はありません。


ただ、受診者さんに投与されたFDGは、18Fの半減期(約109分で半減)と尿中排泄で急速に減ってはいくものの、しばらくは体内に残って放射線を発し続けるため、検査の直後に1歳未満の乳児と密着するなどすると、放射線感受性の高い乳児に余計な放射線を当ててしまうことになります。これもごく微量なので実質的に問題はないのですが、念のた めFDGを注射してから8時間程度は、乳児との不要なコンタクトは避けることを推奨しています。 
 

また、妊娠している女性や子供に関しては、そうでない人よりも放射線被曝に注意する必要があるため、原則としてPET検査は行いません(検査の重要性が高い場合などは、その限りではありません)。

PET検査の限界について

PET検査の限界について PET検査は現代のがん診療には欠かせない非常に優れた検査ですが、がん組織がFDGを取り込む性質を利用した検査であり、体内の「形」よ りも不安定な「機能」を見る検査ならではの弱点もあります。

たとえば、一部のがんは、密集した塊にならなかったり、ブドウ糖を取り込む性質が弱かったりして、がんであってもPETであまり写らないことがあります。また、強い炎症など一部の良性病変は、がんではないのにがんのように写ってしまうことがあります。 

PET検査はその性質上、小さい病変が見えにくいため、非常に小さい病変や平面状に広がるようながんは見えないことがあります。 

脳や膀胱のように正常でもFDGが大量に集まってしまう場所にある病変は、見つけるのが非常に難しいことがあります。 

そのような性質があるため、PETの診断には少し不確実性があり、診断の確定には他の検査を行う必要があることが多いです。

注意事項

検査前の血糖値が高い場合、PETの診断精度が低下する可能性があるため、検査を中止する場合があります。また、検査前の絶食が十分に行えていない場合、PETの診断精度が大幅に低下するため、検査は原則として中止となります。

FDGを投与してからしばらくの間は、体から放射線が出る状態になるため、検査区域から出ることができなくなります。また、スタッフの不要な放射線被曝を避けるため、FDGの注射後は受診者さんから距離を置いての対応が基本となります。

薬剤製造機器や撮影検査機器などの保守点検には万全を尽くしていますが、稀に機器トラブルにより検査時間が変更となったり、検査が延期になったりする場合があります。 

PETがん検診について

FDG-PET検査には、「多くの種類のがんを検出できる」「全身を一度に検査できる」「安全性が高く苦痛がほとんどない」という、がん検診と非常に相性のいい特徴があり、当院でも開院当初よりPETがん検診を行って、多くの潜在的がん患者さんを発見してきています。 

ただ、PETがん検診は万能の検査ではなく、受診者さんに事前に知っておいていただく必要がある事項が幾つかあります。 

まず、非常に重要な点ですが、PETがん検診には「がん検診によってがん死を減らす」というエビデンス(科学的な証拠)がまだありません。PETがん検診はこれまでに数多くのがん患者さんを見つけ出してきましたが、それによって本当に皆さんの寿命や健康寿命を延ばせているかは、いまだ分かっていないのです。ただ、がん検診が有用かどうかのエビデンスを得るためには、そのがん検診を受けた人と受けなかった人の後年の健康状態を長期にわたり確認する必要があるため、PETがん検診のような比較的新しいがん検診が有用性のエビデンスを得るのは非常に難しい、という事情があることはご理解いただければと思います。 

次に、PET検査は過去にセンセーショナルな報道に晒されてきたため、「魔法のようなすごい検査」と「あまり役に立たない検査」という両極端な誤解があります。実際には「がんを探す上で非常に優秀だが、明確な限界や弱点もある検査」であり、魔法でも役立たずでもありませ ん。はっきり言えることとして、PETは多くのがんを見つける一方で、PETでは見つからないがんもありますし、PETで「がんの可能性がある」として調べたらがんではなかった、ということもよくあります(むしろ、がんではないことの方がずっと多いです)。PET検診で全てのがんが見つかるわけではないことや、あまり見つける意味がない良性の病変が見つかってしまうこともある、ということはご了承下さい。な お、当院の検診センターでは、PETが比較的苦手とするがんを見つけるための別の検査を併せて受けることもできますので、希望される方は当院検診センターにご相談ください。 


それから、PET検査は非常に安全性の高い検査ですが、少量ながら放射線被曝がある検査であり、僅かながら検査を受けることによる医学的デメリットもあります。がん検診はメリットとデメリットのバランスを考慮して、一般的にがんができやすい高齢の方ほど推奨されますが、それはPETがん検診も同様で、一般的には50歳以上の方の受診が推奨されます。ただ、がんになりやすい素因がある方(ヘビースモーカー、血縁者にがん患者が多くいる方など)や、がんに対する強い不安がある方もいらっしゃいますので、「50歳未満は受けてはならない」ということはありません。


PETがん検診は残念ながら有用性のエビデンスが確立できていないがん検診であり、またその有用性には明確な限界もありますが、万一受診された方にがんがあるなら可能な限り発見し、必要に応じて適切な治療に繋げるように尽力しております。 

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